賞与の社会保険料と源泉所得税の計算方法
賞与(ボーナス)から控除されるのは、社会保険料と源泉所得税の2つです。社会保険料は「標準賞与額×月給と同じ料率」、源泉所得税は月給と異なる「算出率」方式で計算します。この記事では、賞与計算の手順を上限ルールまで含めて順に解説します。
賞与から控除されるものの全体像
賞与から控除される項目は次のとおりです。
- 社会保険料 — 健康保険料・介護保険料(40〜64歳)・厚生年金保険料・雇用保険料
- 源泉所得税 — 社会保険料控除後の賞与額に「算出率」を掛けて計算
一方、住民税は賞与からは引かれません。住民税の特別徴収は前年所得に対する年税額を12分割して毎月の給与から控除する仕組みのため、賞与は対象外です。「賞与の手取りが思ったより多い」と感じる一因はここにあります。
標準賞与額とは — 1,000円未満切捨て
健康保険・介護保険・厚生年金の保険料は、実際の賞与額そのものではなく標準賞与額に料率を掛けて計算します。標準賞与額は、税引き前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額です。
たとえば賞与が501,800円なら、標準賞与額は501,000円になります。切り捨てはあくまで保険料計算上の処理で、支給額自体が変わるわけではありません。なお、雇用保険料だけは標準賞与額ではなく実際の支給額に料率を掛けます。
社会保険料の計算方法
賞与にかかる社会保険料の料率は月給とまったく同じで、労使折半(雇用保険を除き半分ずつ負担)も同様です。令和8年度の主な料率は次のとおりです。
| 保険料 | 料率(労使合算) | 本人負担 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・東京都) | 9.85% | 折半(4.925%) |
| 介護保険(40〜64歳・全国一律) | 1.62% | 折半(0.81%) |
| 厚生年金保険 | 18.3% | 折半(9.15%) |
| 雇用保険(一般の事業) | — | 0.5%(実際の支給額に対して) |
健康保険料率は協会けんぽの場合、都道府県ごとに異なります(令和8年度は最高が佐賀10.55%、最低が新潟9.21%)。例として、東京都・30歳(介護保険対象外)の従業員に賞与50万円を支給する場合の本人負担は次のようになります。
| 項目 | 計算式 | 本人負担額 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 標準賞与額50万円 × 9.85% ÷ 2 | 24,625円 |
| 厚生年金保険料 | 標準賞与額50万円 × 18.3% ÷ 2 | 45,750円 |
| 雇用保険料 | 支給額50万円 × 0.5% | 2,500円 |
40〜64歳の従業員には、これに介護保険料(50万円 × 1.62% ÷ 2 = 4,050円)が加わります。
社会保険料の上限ルール
標準賞与額には上限があり、上限を超えた部分には保険料がかかりません。上限の数え方が制度ごとに異なる点が実務上の注意点です。
- 健康保険・介護保険 — 年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計573万円が上限。夏・冬など複数回の賞与を合算して判定します。
- 厚生年金保険 — 1ヶ月あたり150万円が上限。支給月ごとに判定します。
高額の賞与を支給する場合、健康保険は「年度累計」、厚生年金は「月単位」という違いを取り違えると保険料を過大・過少に計算してしまうため、給与計算ソフトでも累計管理が正しく行われているか確認が必要です。
源泉所得税は「算出率」方式
賞与の源泉所得税は、月給のように税額表へ金額を当てはめる方式ではなく、次の掛け算で求めます。
源泉所得税 =(賞与額 − 社会保険料)× 算出率
算出率は、国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」のうち「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で決まります。ポイントは、率を決めるのが賞与額そのものではなく、前月の社会保険料控除後の給与額と扶養親族等の数だという点です。前月の給与水準が高い人ほど高い算出率が適用され、扶養親族等の数が多いほど算出率は低くなります。
なお、扶養控除等申告書を提出している主たる給与(甲欄)と、提出のない従たる給与(乙欄)とでは適用される欄が異なります。扶養親族等の数の数え方は別記事で詳しく解説しています。
前月に給与がない場合の特例
入社直後で前月給与がない場合や、賞与が前月給与に比べて著しく大きい場合には、通常の算出率方式が使えないため、賞与を月割りして月額表に当てはめる特例的な計算方法が定められています。該当するケースでは国税庁の源泉徴収税額表の説明に沿って計算してください。
よくある質問
賞与の社会保険料率は月給と違いますか?
料率自体は月給と同じです。健康保険(東京都は令和8年度9.85%)、介護保険(40〜64歳は1.62%)、厚生年金(18.3%)をいずれも労使折半で負担します。異なるのは料率を掛ける対象で、月給は標準報酬月額、賞与は標準賞与額(実際の賞与額の1,000円未満切捨て)に掛けます。
賞与から住民税は引かれますか?
引かれません。住民税(特別徴収)は前年の所得に対する年税額を12回に分けて毎月の給与から控除する仕組みのため、賞与からは控除しないのが原則です。賞与の手取りに影響するのは社会保険料と源泉所得税です。
賞与の源泉所得税はなぜ月給と計算方法が違うのですか?
月給は源泉徴収税額表の月額表に金額を当てはめて税額を求めますが、賞与は「(賞与−社会保険料)×算出率」という掛け算方式です。算出率は国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で、前月の社会保険料控除後の給与額と扶養親族等の数から求めます。
前月に給与の支払いがない場合、賞与の源泉所得税はどうなりますか?
前月の給与を基準にする通常の算出率方式が使えないため、賞与額を月割りして月額表に当てはめる特例的な計算方法が定められています。前月給与がない場合や、賞与が前月給与の10倍を超えるような場合の具体的な手順は国税庁の源泉徴収税額表の説明で確認してください。